1日目
17:00からの自由集会から参加するつもりだったが,学生のポスター作製の手伝いをしていて出遅れた.18:45からの「W09 個体群生態学の基礎理論と行列データベースはどこまで発展したのか?」 に参加.内容はシンプルで,推移行列モデルの発展史についての概説と,マックスプランクによる生活史パラメータのデータベースCOMPADRE(植物), COMADRE(動物)の紹介.データベースを使った一歩進んだ研究紹介があったわけではなかったが,国環研の共同研究者がこのデータベースを使っていると聞いていたので,概要が分かって良かった.終了後,偶然会場で出会った旧友のHさん,Tさんと三宮でちょっとだけ飲む.二人とも元気そうで何より.2日目
朝は,「S01 群集生態学のこれまでとこれから」を聞く.企画者の一人は,ポスドク時代によくお邪魔していた研究室の学生だった人.すごく活躍しているようで,素直にうれしい.発表も面白かった.まだアイディア段階で実際のデータ取得や解析はこれからということで楽しみ.ただし,シンポ全体に話が難しい.群集生態学全体の最先端を統合的に語ろうとする野心は勇ましいが,話の焦点が絞り切れていない感じもあって,聞いている側からすると少々つらい.今回の生態学会全体に感じたことでもあるが,群集生態学を統合した理論構築は近い将来確かにできるかもしれないが,それって,我々が見る自然に対する直感的理解を本当に促進するものなんだろうか?生態学の辺境にいる私はちょっと戸惑ってしまった.午後からは口頭発表を聞く.ナナフシの卵の鳥による分散など面白い発表が多かった.ちゃんと遺伝子まで見て,移動能力が低いはずなのに結構分散してそうであることを示したのはさすが.ヒヨドリとかが食べると,それなりの距離を運ばれるということなのだろうか?質問されて答えていたが,ナナフシの卵が種子みたいなこと自体は鳥による分散と直接の関係はなさそう.キジバトみたいなのが食べると,さすがにナナフシの卵も壊れてしまうだろうから.同じ会場であった工業用内視鏡で明らかにしたウマノオバチの産卵生態の話も純粋に面白かった.生態学の面白さは,こういう個別の現象の魅力があって支えられているのだと改めて思う.
この他にも,口頭発表は楽しい発表が多かった.東大の高木さんのサーキット理論を用いたサンショウウオの移動解析,生息地の連結性の持つ意義の解明は,方法もエレガントだし結果も美しく,素晴らしい研究だと感じた.確かに,サンショウウオは複数の景観を行き来するので,生息地の連結性の重要性を示す上でも最適な材料だ.農研機構の今野さんという方の「キャベツがモンシロチョウから大被害を受ける理由」という発表も興味深かった.要はモンシロチョウの幼虫がキャベツを食べると異常な成長速度を示すということなのだが,それがモンシロチョウ側の特殊性なのか,キャベツ側の特殊性なのか,その両方なのかについて,実証データが溜まってくるとさらに面白いと思った.もともとこの研究は,「世界はなぜ緑か」という有名な生態学上の問い(Green world hypothesis)に端を発したものだが,これについての推理モデルをすでに発表されているらしい.Ecological Monographに掲載されているらしいので,読んでみたい.酸素安定同位体比を用いた種子の標高移動の話も順調に発展しているよう.日本発の大きな成果を期待したい.
夕方からは,「W12 メタゲノムを用いた微生物群集の多様性:探索パターン解釈からの課題と展望」に参加.学生が行っている微生物データの解析の参考になればと思って参加したが,「情報の精度と量にトレードオフがある」という当たり前のことが分かっただけだった.もちろん,多くを学べなかったのはこちら側の不勉強に原因があるわけだが,OTUデータ自体に大きな制約があるので,次世代のデータを使って生態学的に意味のある解析というのは原理的になかなか難しいのだとも感じた.
最後の集会の時間は,ちょっとだけ「W25 生態学若手企画:研究の魅せ方,伝え方を考える」の様子を除く.若い人が積極的に自分の研究の魅力を伝えようとしているのは偉いと思う.東大の学部生がカメラを使って演習林でデータをとっているという話があった.かなりの台数を置いていて,Occupancy modelで解析って.どういう研究なのか詳細を知りたい...
途中で抜けた後は,学生2人を連れて,昔からお世話になっているSさんと久しぶりに会う.相変わらず多忙な様子で,次の日にはインドネシアに行くそう.しばらく会っていなかったが,仕事ぶりや話す雰囲気が変わってなくて安心した.学生にもしっかり発表の問題点を指摘しながらエンカレッジしてくれるのであり難い.近くにいるので,もう少し会う頻度を上げてもらおう.
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