この本は,札幌で野生動物管理学会が開かれた時のシンポジウムをきっかけに編纂されたものだ.カメラトラップの歴史から行動研究,さまざまな個体数・密度推定手法まで紹介してある.2010年の出版で内容的には少し古くなっているものの,現在でも多数引用されており,カメラトラップを利用する研究者には必読の書であるといってよい.とくに10章の空間明示型捕獲再捕獲法の章や11章の占有モデルの導入の章は,これらの統計的アプローチについて参照できる日本語文献が限られていることもあり,カメラデータを使って論文を書く人には大いに参考になると思う.
それにしても翻訳という作業は,思った以上に骨が折れる.ほぼ論文調の文章なので文学的表現に出くわすことはない.美しい日本語にする必要もない.しかし,読んで書かれている内容がはっきりと伝わる日本語にすることは思いのほか難しい.的確な日本語で表現できるかどうかは,文章を書く能力ではなく,どれだけ深く書かれている内容を理解できているのかに依存している気がする.何とか目標通り出版にこぎつけるように引き続き頑張りたいと思う.
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